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奥山貴宏。
この方のことを、どのくらい多くの人が知っているのだろう? どうやらテレビなどでも取り上げられていたようだし、本も出ているし、私が知らなかっただけだと思う。 ひょんなことから彼のホームページにたどり着き、その壮絶な運命を知ることになった。さらには彼のブログも見つけ、しばらくそれを読みふけっていた。 33歳のライターである。2年前のがん宣告から始まった闘病生活を、2冊の本にまとめた。そして先月14日に、3冊目の小説が発売されたばかり。その発売を見届けるかのように、17日に息を引き取った。 飯島夏樹さんの例もある。昨年10月には、高校時代の同級生がやはり癌に命を奪われた。 だがなぜこの奥山貴宏という人間が気になったのか。 ほかでもない。とてつもなく人間臭いのだ。まっすぐな日記。正直なブログ。そしてリアリティを感じるほどに、近い行動範囲。 吉祥寺の、井の頭線ガードの下にある小さいカフェで正露丸臭いお茶を飲み、麺屋武蔵でラーメンを喰らい、CDを探しにタワーレコードに行くが不発に終わる。少し足を伸ばしても行き先は中野、高円寺、荻窪。家は、荻窪と西荻のあいだ。 おそらく、何度も吉祥寺で行きあっていただろう。 この人の日記、ブログには、もちろん闘病の辛い記述はあるけれども主には体温が感じられるような、日常の切り取りが多い。 出会ったことはない人だけれども、そのへんを歩いていそうな身近な感じ。そこに親近感を感じたファンが増えに増える。彼が、「明日、勝田に行くんだけど駅前でおいしいところはないか」と呼びかけると、すぐに返事がくるほどに多くの人が読んでいた。 ときには「死を目の前にした人間がもっと高尚なことを書けんのか」という勘違いファンの投稿があったり。とにかくリアリティ満載なのだ。 彼はこの世を去った。私は今日彼のことを知った。 この時間差がもし逆であったら、つまり4月17日に彼のブログの存在を知り、今日彼が亡くなったとしたら、とてつもない喪失感に襲われただろうと思う。 山口瞳という作家がいる。 私の大好きな作家だ。 週刊新潮に「男性自身」というエッセイ連載を持っていた。実に1600回以上もの連載を、彼は一度も休むことがなかった。最後の1619回目は、彼の亡くなった後に掲載された。 もちろんその闘病生活は、如実に文章に現れてくる。最初の異変が起こった時から、がん宣告、入退院を繰り返し、トイレで倒れて動けなくなり救急車で運ばれるくだり、さらには病院での生活、すべて描かれている。 読者も一緒に闘病しているような気がしていただろう。最後の方は、執筆に集中できなかったのか、事実関係の間違いなども出てくる。それを痛々しくも次の号で自ら訂正する彼。そして最後の文章には、「どうやって死んでいったらいいのだろうか、そればかり考えている」と。 山口瞳という一人の人間がこの世の中からいなくなる。特別なファンでなくとも、涙した新潮読者は多かっただろう。 奥山貴宏。彼の闘病劇は、山口瞳のそれを思い起こさせる。 あくまでも普通の日常もあり、闘病の苦悩もあり。それをとにかく見せる。見せる。 文筆家としての彼の作品は知らないが、今度本屋で見つけた時には是非読んでみようと考えている。同じ時期、同じ場所にいたかもしれない、一人の同年代の文筆家の人生に思いを馳せながら。
by the-beat-goes-on
| 2005-05-05 23:08
| Daily beats
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